リセットして人生をやり直す
「人間蒸発」という映画があった。今村昌平による疑似ドキュメンタリー作品で、1967年に公開され、評判を呼んだ。
要するに、かなり前から日本では、失踪することを蒸発と比喩的に表現してきた歴史がある。熱せられた水が、ジュッと気化するように、忽然と姿をくらます社会現象。

もちろん失踪自体は世界中どこでもある。だが、それを蒸発と呼んだのは日本人だけだったらしい。まるで忍者のように瞬時に姿を消してしまう日本人。そんなイメージを抱いたのかどうか。今世紀に入り、欧米で日本の蒸発に対する関心が高まる。
本作も、そんな流れの中で作られたドキュメンタリーと言えそうだ。「人間蒸発」のように一人の失踪者周辺に焦点を絞るのではなく、何人かの失踪者と、彼らを手助けする夜逃げ屋、失踪者を探す家族と私立探偵――複数の人物がバラバラに独立して登場する。