全編にユーモアと人情があふれている。だが、同時に胸がつまるような悲痛な現実も暗示されている。一筋縄でいかない映画である。
少女が見つめる混沌の世界
2025年の第26回東京フィルメックスで観客賞を受賞した本作。当時、本サイトに載せたレビューに加筆した上で再掲載します。
シングルマザーのシューフェンが長女イーアンと次女イージンをバンに乗せて、台北の街へと向かうシーンから映画は始まる。蒸発した夫が作った借金の返済に目処が立ち、人生の再スタートを切ろうと、一度離れた台北に戻ってきたのだ。

シューフェンは夜市で麵屋台を開業するが、病気で入院している夫の医療費を負担するなど、苦労は絶えず、一向に生活は楽にならない。ただし、隣で雑貨屋を営む若い男に惚れられ、お熱い関係になるという、そんな楽しみもないではない。

一方、長女のイーアンはいかがわしいビンロウ屋で働き始めたかと思うと、たちまち店長と関係を持ってしまう。品行方正とはほど遠く、母親に対しても反抗的だが、それは一時的なことではなさそうだ。何か二人の間に因縁めいたものがあるのだろうか。
しかし、日々の暮らしの中で人間関係にいちいち頓着しているゆとりなどはない。立ち止まって考えることなどできないのだ。慌ただしい毎日が繰り返されていく。
