BLOG

映画レビュー「籠の中の乙女 4Kレストア版」

2026年10月6日
NEW!

両親に純粋培養される子供たち
※「ロブスター」(2015)、「哀れなるものたち」(2023)など、発表する作品がことごとく話題となり、各映画祭で高評価を獲得してきたギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス。その初期代表作「籠の中の乙女」が、4Kレストア版として復活した。本作初公開時に書いたレビューを、一部加筆修正した上で掲載します。

外界から遮断された邸宅に閉じ込められ、両親の完全コントロール下で育った息子と娘たち。学校には行かず、友人もいない。外出もタブーだ。しかし、彼らは不満に思っていない。外の世界は怖いところ、安全なのは家の中だけ。幼いころから両親にそう刷り込まれてきたからだ。

何しろ、敷地内には、広い庭がある。プールもある。何不自由ない裕福な暮らし。もちろん実際は自由ではないのだが、そもそも自由という状態を知らないので、自分たちの不自由さに気づきようがないのだ。

すべては、両親の教育のたまものである。外部から余計な情報が入らないよう、電話やテレビはシャットアウト。外界に関わる単語、グロテスクな単語、猥褻な単語は、全く別の意味に置き換えて覚えさせる。たとえば、ゾンビは“黄色い花”、プッシーは“大きな灯り”の意味。

また、なぜか分からないが「おじいさんの歌を聴こう」といって父親がかけるレコードは、「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」。フランク・シナトラ版のように聞こえるが、エンドクレジットを見るとフレッド・ガードナーとなっている。シナトラそっくりのパフォーマンスで有名な歌手である。

父親は、その歌詞を家族愛の詞に“訳して”子供たちに聞かせる。何よりも家族が大切、という観念を、音楽鑑賞を通して植え付けているわけだ。

一方、外の世界については、徹底的に恐怖感をあおる。こっそり自分で衣服を切り裂き、ワイシャツや顔面を赤いペンキで血染めにして帰宅する父親。一歩でも外に出たら、こんな酷い目に遭うんだぞ、という脅しである。

投稿者 : GOTOH Nobu

投稿プロフィール_EZGlobal123日本事務所代表。DX・IT開発と運用も担当しています。
プロフィールに添える簡単な自己紹介を書き入れてみましょう。
この情報はテンプレートを編集すればサイトに表示できます。
Website