ワン・トンの傑作3本
ホウ・シャオシェンやエドワード・ヤンらが注目を浴びる一方で、作品の上映機会に恵まれずにきた、知られざる名匠ワン・トン。今回の「台湾巨匠傑作選2024」では、台湾ニューシネマの牽引者として活躍したワン・トン監督の未公開作2本を含む「台湾近代史三部作」が、いずれもデジタルリマスター版で一挙公開される。
第二次世界大戦下、空襲で降ってきた不発弾をめぐって、農民たちが巻き起こす騒動を描いた『村と爆弾』(1987)。国共内戦で国民党軍に潜り込み、憧れの南国・台湾で数奇な運命に翻弄される男の人生を追った『バナナパラダイス』(1989)。日本統治時代の鉱山と娼館を舞台に繰り広げられる波乱万丈の群像劇『無言の丘』(1992)。
いずれの作品も、過酷な時代を精一杯生きる民衆の喜び、悲しみ、怒りを、時にリアルに、時にロマンティックに綴った、台湾映画史に残る傑作である。
「村と爆弾」
第二次世界大戦末期、日本統治下の台湾。農村では若い男たちがみんな兵隊にとられ、南方戦線で命を落としていた。ところが、アファとコウズエの兄弟は、母親の奇計で徴兵を逃れ、牧歌的な暮らしを続けていた。

そんなある日、都会から親戚の家族がやってくる。コウズエの妻の妹夫婦と子供たちだ。地主の夫は兄弟の田畑を製糖会社に売り払うつもりらしい。慌てる兄弟に追い打ちをかけるように、日本軍が農家の牛を徴用すると発表した。
窮地に追い込まれた兄弟だが、救いの神が降ってくる。米軍の空襲で不発弾が畑に突き刺さったのだ。軍に持ち込めば表彰される。兄弟は親しい巡査とともに、不発弾を担ぎ、駐在所へと乗り込むのだが――。
子沢山の貧乏家族を抱える兄弟が、起死回生のチャンスに遭遇。しかし、計画はあえなく潰(つい)える。と思ったら、事態は意外な展開へ。どんでん返しのエンディングが爽快だ。
戦争で両脚を失った兵隊、夫の戦死で気がふれてしまった兄弟の妹。悲惨な要素が散りばめられてはいるが、映画は暗く沈むことなく、たくましく生き抜く農民たちの姿が、ユーモラスに描かれる。
婦人会の防空演習、巡査が歌う軍歌「日本陸軍」、子供たちが歌う童謡「夕焼け小焼け」など、時代の雰囲気も活写されている。
「バナナパラダイス」
1949年、中国・華北。国共内戦の只中、国民党軍に潜り込んだメンシュアンは、幼馴染のダーションとともに、バナナがたわわと実る南国台湾へと赴いた。だが、二人は共産党スパイの容疑をかけられ、ダーションは行方をくらます。

逃走したメンシュアンは、ある夫婦と知り合うが、夫のチーリンは病死してしまう。赤子を抱えた妻のユエシャンに求められるまま、チーリンになりすましたメンシュアン。
高学歴のエリートだったチーリンの華やかな履歴のおかげで就職はできたものの、学歴がないゆえ満足に仕事がこなせず、綱渡りの日々が続く。
その後、身分がばれかける危機を何とか乗り切り、メンシュアンは台南のバナナ園にダーションを訪ねるが――。
変わり果てたダーションを引き取ることを決意したメンシュアンが、妻子とダーションを養うため悪戦苦闘を続け、何とか安定した職に就くまでのプロセスが、戦後の台湾史を背景に描かれる。
さらにそこから十数年後、管理職にまで出世したメンシュアンが登場し、物語は予想もできない局面を迎える。偽りの上に成り立ってきた人生が、驚くべき事実の発覚によって、至高の瞬間へと導かれる。鮮やかな作劇術に脱帽である。
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とてもいい映画でしたよ
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